『ロシアのマトリョーシカ』
スヴェトラーナ・ゴロジャーニナ/著
有信優子/訳
ロシア人による世界初のマトリョーシカ図鑑が、
ある日出勤すると、デスクの上に置いてありました。
路傍に放置された廃車を記録し続けるウェブサイト
「叢荘8148号室?草ヒロ展示室」が、
満を持してリリースした、完全限定生産の豪華本。
廃車には興味がなかったけど、
本書が素晴らしい内容であることは予測がついた。
それは、ウェブサイトの管理をしているタチ氏の、
本や活字に対する偏執狂的な愛情を、
個人的に知っているからだ。
著者は、1974年1月10日端島に初上陸し
端島炭鉱が閉鎖される前の数ヶ月間、
島に通い、写真を撮り、島民と話をした。
キャプションではなく、読みごたえのある文章がよかった。
感傷から遠いところで、けれど島の人間の目で書かれた
貴重な記録だ。
一人、また一人と、島を出て行く家族を見送る姿が
目に浮かんでくるようだった。
あなたは畸人研究学会をご存知だろうか~
まだ出会っていなければ、本書を読んだ方がいい。
(知らないという人は、取り急ぎHPで彼らの研究をチェックしてほしい。)
ただ、電車の中ではカバーをかけて読むべきである。
本書はごらんのとおり、表紙のインパクトもかなり強く
世間の目が突き刺さるであろう。
知っていますか~
外骨という人がいたことを。
明治時代の孤高のジャーナリストです。
彼のおもな特徴は三つです。
とても、過激で不正に対して攻撃の手をゆるめない。
そして、しつこい。
ゆえに、当局から睨まれ、よく捕まる。
フランスの南東部にあるオートリーブという小さな村に
すごい宮殿があるのをご存知でしょうか。
空想癖の強い郵便配達夫が
勤務中に見つけた変わった形の石を集めて
夜な夜な作り上げた理想宮で
100年以上も昔の1870年頃のものです。
赤瀬川原平氏ら路上観察学会の面々がリスペクトしている、
考現学の創始者、今和次郎の著作の中で
一番手に入りやすく、入門者でも読みやすいのが、この本です。
藤森照信氏が編集されているので
建築や、路上観察がお好きな方にお薦めです。
水星文庫ってご存知ですか~
1980年代中頃に、筑摩書房から出版されていたシリーズで
『ある迷宮物語』 種村 季弘
『映画はもうすぐ百歳になる』 四方田 犬彦
『闇にひとつ炬火あり』 池内紀
『今やアクションあるのみ!』 赤瀬川源平
等々、豪華な執筆人と面白そうなタイトルで
一世を風靡したんじゃないか、と想像しています。(よく知らないけど)
どうですか? おもしろそうでしょう。
~
帯のコピーがいきなり、いいですよ。
「尾道から始まった瀬戸内の旅」です。
いい具合に寂れた街角がたくさん出てくる、
小林伸一郎氏の瀬戸内地域の写真集が発売されました。
路地裏のスナック街、色褪せた原色の壁絵、
朽ちた桟橋や銭湯の番台、
以前八画文化会館でもイル・カポネ氏によって報告された梶山時計店など、
私たちの大好きな終末物件が芸術に昇華されています。
『TEAM酷道』管理人よごれん氏の著書である。
本書は、決して酷道の研究本というわけではないので注意が必要だ。
「酷道は、私にとって旅を楽しくさせるための手段であって、
目的ではなかった」
と鹿取氏が自ら書いているとおり、
酷道を走ることを趣味としている著者が、11本の酷道について、
旅に出る準備から、途中の寄り道まで含めて書いた、紀行文である。
本文ページの欄外には、注釈が設けられているが、
マニアが求めるディープな酷道情報は、ほとんど書かれていない。
基本的な道路情報に紛れて書かれている、
謎めいた欄外メモを拾ってみると・・・
●柿ピー
コンビニのおにぎりと共に私の主食と化している。
●とらさん(趣味仲間)は、細かいことにはよく気づくが、
大きなことをよく見逃す。
●結果オーライ
ノープランな我々にとって、実に都合のいい言葉だ。
●根回し
主にカミさんのご機嫌とりに終始する。
酷道に行くための、最初の険しい道のりだ。
などという、酷道とかけ離れたメモがちょこちょこ書かれている。
私は、このような実用性は全くないけど、
「何か分からんけど楽しそうだなあ」という部分が面白かった。
面白かったし、深く共感をおぼえた。
本書では、酷道一本命かけてます、という熱いテンションではなく、
無目的に車を走らせたり、寄り道したり、途中で計画変更する等といった、
余計な事や無駄な事に誌面がおおく割かれている。
そこにこそ、酷道の旅の醍醐味があるからであろう。
酷道という、一般人が通らない道を走ることによって生じる、
ハプニングやアクシデントこそが「酷道を走る」ことの楽しみなのだ。
酷道に対する知識は大して増えないけれど、
大の大人が「酷道を走る」ことを楽しんでいる様子が、
気負うことなく伝わってきて好感が持てる。
何よりも「オレも旅に出よっかなあ」と冒険心にポッと火をつけてくれる。
その読後感が心地良い。(サカイ)
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