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小林伸一郎氏、新作『島波 瀬戸内景』出ました!

2011年02月 | CATEGORY : book | COMMENT(1)

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帯のコピーがいきなり、いいですよ。
「尾道から始まった瀬戸内の旅」です。
いい具合に寂れた街角がたくさん出てくる、
小林伸一郎氏の瀬戸内地域の写真集が発売されました。

路地裏のスナック街、色褪せた原色の壁絵、
朽ちた桟橋や銭湯の番台、
以前八画文化会館でもイル・カポネ氏によって報告された梶山時計店など、
私たちの大好きな終末物件が芸術に昇華されています。

これまで、小林伸一郎氏といえば、
人工物が朽ちた後を写した廃墟写真、
人工物が出来上がりつつあるダイナミズムを写した建設途中の写真、
道端に捨てられたような(等身大)人形など、
無生物を生きているように見せるのが、
面目躍如たるところかと思っていましたが、
今作には人物(生きた人間)がかなり写っています。

しかし、一般的な人物写真の魅力とは、
勝手の違った趣があります。
人物写真というのは、
生きている人間の、その内側にある感情の
どの部分をひっぱって、ライトを浴びせてみせるか
という感情の選択のことだと私は思うのですが、
「生きている人間は生きている」という当たり前のことは
案外忘れられて、ただの大前提になっています。

小林伸一郎氏は、それをひっくり返している。
様々な感情が渦巻きながら生きているはずの人間の、
どの感情もひっぱってこない。
だから表面的には写っている喜怒哀楽が、
視えないのです。

生きている人間も、なぜか彼の手にかかると、
人間を装った人形のように見えます。
たとえば、岩の前で杖をついた老人が
困ったように笑っている写真(p122)がありますが、
道端に放置されたマネキンと同じ「物」として写っています。

「生命を持っているはずのないものが、
あたかも生々しい感情を宿している気がする」
それが廃墟写真家としての氏の魅力だと思っていましたが、
この作品集を見て、小林伸一郎氏の魅力は、
「カメラと風景を媒介にして、
人間の生死を反転させる力を持つ」
ことだと認識を新たにしました。

こうもあっさりと生死を手玉に取られると
生というものが、本来は壮大な勘違いか思い込みでしか
ないんじゃないかと錯覚させられてしまいます。
朝からロマンチックな思考回路が開いたよ。
 
 
 
●『島波 瀬戸内景』小林伸一郎(講談社)2011年2月発行
2011年2月/イシカワ
 
 
 

八画メイドの小林伸一郎作品  

 
 
廃墟の魅力


人形の魅力


人工物がダイナミックに変貌するところ

コメント(1)

Super aussehende Website. Ich habe vor kurzem gebaut mir und ich war für einige Design-Ideen suchen und ihr habt mir ein paar. Darf ich Sie fragen, ob Sie die Website durch youself entwickelt?

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