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『廃色ノ残照』ZIT-agency

2012年05月 | CATEGORY : book | COMMENT(0)

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路傍に放置された廃車を記録し続けるウェブサイト
「叢荘8148号室?草ヒロ展示室」が、
満を持してリリースした、完全限定生産の豪華本。
廃車には興味がなかったけど、
本書が素晴らしい内容であることは予測がついた。
それは、ウェブサイトの管理をしているタチ氏の、
本や活字に対する偏執狂的な愛情を、
個人的に知っているからだ。



やはり期待通り素晴らしい内容であった。

誌面作りにたっぷり費やされた時間と愛情が、
ページをめくるたびに伝わってくる。

郵送に使われたクラフトの封筒から、
包装に使われた銀色のシール、特典のステッカー、
箱入りの装丁など、全てに愛がつまっている。

この、ホームメイドな手触りと採算度外視の過剰な愛情こそが、
優良なインディーズブックの真骨頂だ。

本を所有するだけで、あたたかい気持ちにさせてくれる。

中身は、約7年にも及ぶ廃車探索活動から、
貴重な廃車をピックアップした集大成的な内容となっている。

専門的な知識に裏付けされたヅラヲ氏の解説は、
専門用語を駆使しながらも決して評論的にならず、
廃車に対する愛情と発見することの喜びが滲み出ていて、
読んでいてワクワクさせてくれる。

廃車マニアであれば、ヅラヲ氏の解説と膨大な記録写真だけでも、
買って読む価値があるはずだ。

しかし、彼らが本当に素晴らしいのは、
もしくは、個人の趣味の域を完全に脱している点は、
廃車の情報を専門的に極めることを自己目的化しなかった点だ。

マニアックな情報に精通した優秀な専門家ヅラヲ氏と、
電気グルーヴでいうところの
ピエール瀧のようなムードメーカー・インチン氏
(憶測です、違ったらごめんなさい)と、
ビジュアルとテキストの見せ方を心得ている
編集者の視点を持ったクリエーター、タチ氏。

それら3者が、対等な関係で集まっている点が、
彼らの強みであろう。

まるでバンドのメンバーように役割が明確な3人だからこそ、
多用な価値観が生まれ、表現に深みが出て、
結果的に僕のような廃車に興味のない人にも、
楽しませるパワーを持った本が実現できたのだ。

残念ながら、予約の段階で全て売り切れてしまい、
現在では入手することはできない。

(増刷しないのな?)

しかし、彼らの活動は現在も
ウェブサイト『叢荘8148号室‐草ヒロ展示室』で楽しむことができる。

ぜひ一度のぞいてみてほしい。

放浪の旅に出て、探索して、美味いモン食べて、
それを表現する、という至福のサイクルを垣間見ることができます。

 叢荘8148号室‐草ヒロ展示室


●『廃色ノ残照』
ZIT-agency /2010年2月/サカイ



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