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『学術小説 外骨という人がいた! 』赤瀬川原平(筑摩書房)

2011年07月 | CATEGORY : book | COMMENT(0)

知っていますか~
外骨という人がいたことを。

明治時代の孤高のジャーナリストです。
彼のおもな特徴は三つです。
とても、過激で不正に対して攻撃の手をゆるめない。
そして、しつこい。
ゆえに、当局から睨まれ、よく捕まる。

『威武に屈せず富貴に淫せず、
ユスリもやらずハッタリもせず、
天下独特の肝癪を経(たていと)とし
色気を緯(よこいと)とす。
過激にして愛嬌あり』

というスローガンを掲げて、現代の週刊誌の始祖のような
「滑稽新聞」というのを発行していました。
お正月号の付録に、
「紙屑買いの大馬鹿者」と書かれた古新聞をつけるなど、
けっして「お客様は神様だ」などというチンケな発想はせず、
自分の発行物を買ってくれる読者に対しても批判精神にみち溢れた、
とても気概のあるジャーナリストだったようです。

むろん当局から睨まれ
発行禁止命令が出されてしまいますが、
最終号を「自殺号」として発行しました。
素晴らしいと思います。

墨池亭黒坊らの、挿絵画家も素晴らしい働きをしていて
見ているだけでも楽しい新聞です。

外骨氏は、さまざまな不正に対して噛みついていますが、
とくに有名なのが野蜘蛛こと
野口茂平に対してのすさまじい攻撃です。
野口茂平さんというのは、
富山のインチキ薬売りみたいなものです。
この人をさんざん罵倒し、
さらし首の絵などをしつこく載せて告発しました。

それから、東京郵便局の町田重備に嫌がらせをされて
ここぞとばかりにやってやりました。

  テんで話にならぬ大馬鹿者町田重備
  テ柄にもならぬことを威張る町田重備
  テを胸に当てて能く考へろ町田重備
  テ洟をひッかけて遣りたい町田重備
  テ酷く遣つ付けねばならぬ町田重備
  テつ瓶の熱湯を浴せてよい町田重備
  テ槍を以てお見舞申したい町田重備
  テんびん棒で打ち延すべき町田重備
  テつ道往生でも為せばよい町田重備
  テを突て謝る迄打撃すべき町田重備
  テンプラ紳士たづ奴役人の町田重備
  テん癇になッて死ねばいい町田重備
  テナこと云ッても解らねー町田重備

これでも、はしょってありますが延々と続く罵詈雑言の
テ作文です。

私も、昔よく母親に「しつこい」と言って叱られましたが、
ここまでやらなければ大成しないのでは、
テんで話になりません。
すべてのジャーナリストは、彼の気概を見習うべきだと思いました。


●『学術小説 外骨という人がいた! 』 
赤瀬川原平/1991年12月/筑摩書房/イシカワ


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