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廃墟という名の産業遺産「時山第2発電所」

2012年07月 | CATEGORY : 産業遺産小(ケーブルカー、変電所) | COMMENT(0)

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三重県と岐阜県の県境付近の山奥、
清流沿いの車も人も歩かないようなケモノ道を
山奥へと向かう途中、
忽然と姿を現す発電所の廃墟がある。



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私は、梅雨が明けた7月のある晴れた日に、
この発電所廃墟を訪れた。
この発電所は、三重県を代表する廃墟として君臨する、
藤原鉱山(白石鉱山)の関連施設だ。

(そう言えば、昔から
藤原鉱山の山奥には発電所の廃墟があると、
まことしやかに囁かれていたっけ...)
発電所に向かう道の途中で、
藤原鉱山の施設跡をいくつか見かけた。


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スニーカーにジーパン、
Tシャツという格好で、
ピクニック気分で探索に向かったのだけど、
思いもよらぬ悲劇に見舞われてしまった。
なんと、このケモノ道周辺には、
無数の山ヒルが生息していたのだ。

山ヒルは、尺取虫のように、
伸縮しながら、地べたを這う。
少しでも足を止めると、
山ヒルが靴にピタリと引っ付き、
伸び縮みしながら、ジーパンの裾へ入り込み、
皮膚の方へと張り付いてくるのだ。


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自慢ではないが、私は10数匹の山ヒルに噛まれた。
その経験を語らせていただくと、
山ヒルが皮膚に張り付いているときは、
実は感覚がまったくないのだ。

僕の場合、喉が渇いてお茶でも飲もうと
地べたに座った時、自分の脛の部分が、
まるでタトゥーでも入れたように、
真っ黒に模様が入っていて、初めて
山ヒルが自分の足に張り付いていることに気づいた
(鈍感すぎるけど)。
決して痛みで気づいたわけではない。


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しかも山ヒルは一度張り付くと、
なかなか皮膚から取れない。
それでいて僕の足の皮膚で、
イヤイヤをするように伸縮するので、
ウナギやドジョウを掴むように、
剥がすのが非常に困難なのだ。
で、いざ張り付いている山ヒルを剥がし取ると、
その時に初めて山ヒルに噛まれた跡から、
雨のようにドクドクと血が流れるのだ。
しかも、その時もさほど痛さがない。

僕の脛は片足6匹ずつくらいいたので、
全部の山ヒルを取り除いたときには、
足元が真っ赤に染まった。

山ヒルの話に夢中になってしまったけど、
発電所跡もとても美しい廃墟であった。
建物の規模は小さく、内部の残留物もさほど目新しさはないけど、
山奥の清流沿いにひっそりと佇むロケーションが、
素晴らしかった。


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山鳥と清流の静かなせせらぎを耳にしながら、
けものみちをゆく。
30分ほど歩いただろうか...川の向こうに建物が見える。
息を飲むほど美しい、時山第二発電所だ。
大自然と見事にマッチしている。
鬱蒼と生い茂った夏草を掻き分けるて、外壁までたどり着く。
赤茶色に錆び付いた門扉が開いていた。


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内部は特に荒らされた様子もなく、ただただ寂しい。


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内壁の色使いや天窓のせいだろうか、
内部は洋館を思わせる。


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帰り際、建物とけものみちを結ぶ、
腐りかけた橋を見かけた。


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さよなら、時山第2発電所。

余談だけど、探索を終えた帰り道、
お尻がかゆいなあと思ったら、
お尻にも山ヒルが張り付いていました。
どうやら、地べたに座り込んで、
足の脛に張り付いた山ヒルを取っている最中に、
好奇心旺盛な山ヒルが、
僕のヒップに不法侵入してきたようです。
お尻を噛まれた経験は、
人間動物問わず、初めてでした。


●時山第2発電所
岐阜県養老郡上石津町時山/2005年7月(取材・初掲載)/サカイ



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