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不思議なビルディング

2011年07月 | CATEGORY : 終末物件 | COMMENT(0)

ここは、不思議なビルでした。


「ビル」と呼ばれる背の高い建物が
存在しない土地=愛知県安城市で生まれ育ったので、
単に僕自身が、ビルカルチャーに疎いだけかもしれません。
  
  
  

今回紹介するビルは、町の繁華街に面した、
規模の大きな雑居ビルで、
いわゆる「昭和の雰囲気を色濃く残した」古ぼけた雑居ビルである。
1、2階が各種テナントで、3階より上が住居フロアとなっている。
 
 
 

(3階より上にも一部店舗がある。)
テナントは、リーズナブルな飲食街、複数の消費者金融、
ビデオ試写室、理容、スナックなど、様々な業種が雑居している。
このビルディング自体が、街の繁華街の一部となっていて、
かつては繁華街の中心的役割として賑わっていたようだ。
 
 
 

表通りに面した部分は、テナントショップが虫食い状態に、
各々の個性をアピールしていて、デザイン的な美しさは別にして、
とりあえず賑やかである。
しかし、表通りから一歩入ったビルディングの内部は、
表の喧騒と打って変わって、静かで、薄暗く、冷たい雰囲気であった。
 
 
 

薄汚いグリーンで統一された建物内部は、
日の字型の造りになっていて南北に口と口型に分かれている。
口と口の真ん中の共有通路にエレベーターがある。
 
 
 

口型に囲まれた真ん中部分は、
1階と2階がそれぞれ広場となっていて、
3階より上は吹き抜けとなっている。
1階の広場は薄暗く、
2階の広場は光が差し込む分、明るい。

 

建物の作りは左右対称を意識して作られていて、
通路の左右に規則正しく配置された階段、
東西南北にそれぞれ配置された出入り口など、
機能性と規則性が調和している。
 
 
 

しかしその反面、無駄のない機能性が、
この場を無機質な空間に仕立て上げている要因となっていた。
 
 
 

また、建物内部の広場に面した1、2階にも、
シャッターを下ろした店舗を幾つも確認することができる。
 
 
 

表通りだけでなく、建物内部もひっくるめて
商業スペースであったのだ。(しかも敷地内に神社まである)。
ところが今では、シャッターが下ろされ、
(僕が訪れた休日の昼間に限って言えば)ほぼ無風状態となっていた。
商店が空洞化してしまったことによって、
寂しさが強調されてしまうのだろう、
にぎやかな外界から閉ざされたインナースペースに、
うら寂れた空間がポッカリ口を開いている。
そして、商業スペースが機能していない今では、
人気のない無駄な空間が広がる、
不気味な居住ビルとなっていた。
 
 
 

ここまで書いていて、このビルが本当に
珍しいのかどうか自信がなくなってしまった。
単に、口の字型した・人口密度の高そうな・荒廃が止まらない・古い建築物に、
反応してしまっただけだろうか?
もしくは、閉鎖したばかりの廃墟に似た、
虚無空間が気持ちいいだけなのかもしれません。

個人的には、大阪の軍艦アパートよりも
感じ入るものが大きかったです。
が、自分で自分のことがよく分からなくなってきましたので、
思っていることの全てを書ききれないまま、
途中で投げ出すことにしました。
ポイッ!
 
 
 
●不思議なビルディング
富山県/2007年7月(取材日)2008年10月(初掲載)/サカイ
 
 

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