とある夏の夜、
福井県あわら市吉崎を車で走っていると、
夏祭りの賑やかな音色が聞こえた。
私は基本的に祭りに何かを期待しない。
この国のほとんどの祭りは、
観光やら商業的な事情から、
観光客に「見せる祭り」になっている。
遊園地のアトラクションのような祭りを
「皆で盛り上げよう」と頑張る人たちや、
そこにニコニコと群がるような人たちとは、
一線を画していたいものだ、
と年を重ねるたびに強く思う。
「見せるほどでもない」祭りだけが、
共同体のなかでひっそりと続いている。
そんな祭りをコソコソ見届ける程度がいい。
吉崎の祭りは、
まさに「消えて久しい村祭り」そのものだった。
「りつま夏」と書かれた遊歩道から、
舞台上で三味線を集団で演じるご老人を横目に歩く。
水面を照らす巨大なゲゲゲの鬼太郎と猫娘、目玉の親父。
鬼太郎とあわら市吉崎の関係性は分からないが、
そこに浮かぶ灯篭に書かれた文字の意味は
もっとわからなかった。
なにはともあれ、私は最近始めた、
音楽以外のブルースの採集という、
一大プロジェクトの貴重なサンプルを入手できた。
2つの灯篭に書かれた
詩のようなメッセージは以下のとおりである。
あわら市吉崎夏まつりのブルース
(作詞者不明)
?
神も信じ
仏も信じ
占いも信じ
本当は何一つ信じられない私
?
われよしと
照らされて知る
思う心の恥ずかしさ
この心かな
うーむ。
謙虚なのか厭世的なのか、
奥が深いというか何と言うか。
読み解けない謎の余韻に浸りながら、
私は足早に去ったのでした。
●あわら市吉崎の夏まつり
福井県あわら市吉崎/2007年7月/サカイ
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