「牛がいっぱいいましたねえ」
と笑顔のシェーガイ老人(通訳)だったが、
上敷香を立ち去ろうとする私たちに、
待ったの声をかける青年(ボイラーマン)が現われた。
彼は、長年、この地に日本人が来るのを待っていた、
日本人が来たら見せたいものがあるんだ、
と言います。
長年待ち続けた日本人などという大役を、
私なぞが引き受けていいのだろうか、
と思いつつ案内してもらうことに。
ボイラーマンの案内に従うと、
雑木林のなかに突然、舗装された巨大な道路が出現した。
恐らく、海軍の飛行場跡であろう。
何らかの軍事施設の入口。
真っ暗な内部には台座らしきモノが残っている。
格納庫。
天井にレールがある。
壁が黄色く変色していた。
ご覧の通り、何も残っていない。
壁に、ロシア語の落書きが多数残っていた。
高く伸びたポールは、何のためだろう?
さて、ここからボイラーマンの登場です。
針葉樹林の森林のなかを足早に進んでゆきます。
15分くらい歩いたでしょうか。森のなかに倒れた石碑があります。
ボイラーマンが石碑をひっくり返し、土で汚れた石碑を拭うと、
なにやら文字が浮かびあがってきます。
そこには、海軍用地と書いてあるではありませんか!
これは貴重です。
なぜならサハリンにおいて、
日本軍の施設で、日本語が残っているということは、
奇跡に近いからです。
ボイラーマンは、日本語が書かれている面を元通りに伏せた後、
「よろこんでもらえてよかったよ」と笑顔を見せました。
●レオニードボ(上敷香)の旧日本軍の軍事施設跡
ロシア・サハリン州レオニードボ/2007年8月/サカイ
『廃墟という名の産業遺産』を、
直販で買ってくれた人におまけでつけてる
「あなたの知らないサハリン」の中にも
このボイラーマンの話が出てくるんだけど、
そっちのバージョンがね、すごくにいいんです。
「てにをは」も、ちゃんとはわからない館長だけど、
短編小説を読んでるような、
素敵な読後感があって、
なんだかさみしい感じが漂っています。
思わず家の壁に貼ってるよ。
コメント(3)
これはもうドキュメンタリーの域に達してますね。
NHKとかの放送作家に記事を送ったら飛びつきそうなネタです。
「天井にレール」は爆弾を運搬するのに使っているのを映像で見たことがあるのですが確かではありません。
シェーガイ老人という名前をきくと
ホルガー・シューカイを思い出しますなあ。
(空気を読めないコメントで恐縮です)
●くまおさま
お褒めの言葉ありがとうございます!
素敵な廃墟探索に出会うと、
ドキュメンタリー作家になった気分になれます。
「廃墟は、人を、ドキュメンタリー作家にさせる」
これは名言(迷言)の仲間入りになるのではないでしょうか?
●ポンチハンターさま
コメントありがとうございます!!
ホルガー・シューカイって誰だろう?
小学校の教科書に載っている人物で、
僕だけが知らなかったら、恥ずかしいなと
思って、グーグル画像検索で調べてみたところ
まったく知らない、オモシロおじさんの
画像が出てきました。
ポンチハンター氏のお友達です??
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