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広島にて、終末商店街の主との対話

2010年08月 | CATEGORY : 終末物件 | COMMENT(0)

 

広島でのことだ。
炎天下のなかを歩き回って疲れ果て、
お客様のお買物道路である
宇品ショッピングセンターに
涼みに行った。

祝日だから開いてない店と
祝日じゃなくても開いてない店とが混在していて、
とにかくひっそりとしている。

ここに行ったときには、
終末を旅してやろうという意識はまだなかった。
しかしどうやら、散歩中に
涼みたい、疲れたので腰をおろしたいなど、
自堕落な心が芽生えると、
終末物件に吸い寄せられてしまうようだ。

 

「感じるセンス・感じる値段の店」ニューオオサカは、
看板の文字通り、
きっととてもセンスを感じさせる店だろう。
「感じる値段」という言葉のセンスが
何より素晴らしい。

ラコステの鰐マークと、
マンシングウェアのペンギンマークも
とても上手に描けているし、
ドアも目に鮮やかだ。

 

干物屋さんだ。
どこの店も絵が上手だった。

 

おもちやさんだ。
このキューピーも、素朴な違和感があって
とても素晴らしい。
キューピーなのに、
バタ臭くない顔がいいんだろうか。

ぼんやり鑑賞しつつ写真を撮っていると
とんきょうな声で話しかけられた。

 

おもちやのまえおか
の前で、せっせと何かよくわからないものを
作っているおじいさんからの発言だった。

 

この商店街ももう駄目だというような
暗い話と、前日に降った大雨で
広島の町がえらく大変だったことを
繰り返し訴える。

 

社会派らしく、
この不甲斐ない社会に対して
切れ味の鋭い意見を開陳する。
名演説だったような気がするが、
詳細は忘れてしまった。

中国新聞に知り合いがいる、
とも言っていた。
もしかすると、広島では名の知れた
論客なのかもしれない、と思った。
しかし、論客はここで
よくわからない作業に精を出したりは
しないだろうとも思った。

 

「あんたさんはどう思いますか」
私は熱弁をふるうほど
広島の社会に対して意見を持っていない自分を
不甲斐なく思った。
しかし、おじいさんは
「いい感想文を書いて下さい」
と言う。

しかし、「いい感想文」を書こうと思えば思うほど
焦ってしまっていけない。
今書かなければ、この商店街も早晩
なくなってしまうだろうというような、
義憤にかられて熱い気持ちになろうとすると、
余計にだめだ。

夏休みの宿題を済ませていないような、
そわそわした落ち着かない気分で、
もう間に合わないかもしれないと思いながら
ぎりぎりになって、やっとやる、
そのぐらいのテンションがどうしても
似合ってしまうんだろう、
終末物件の紹介には。

 

いい感想文への道は、
果てしなく遠い。

 

 
●宇品ショッピングセンター
広島県広島市南区宇品/2010年7月/イシカワ

 
 
 

背景ビジュアル資料シリーズより
商店街。

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